聴力の低下は、誰にでも起こる現象です


それでは具体的にどのような状態なのでしょうか?

日本での聴力低下推測人口は約2,000万人

日本補聴器工業会の資料によると、現在、日本で聴力が低下していると推測される人は約2,000万人といわれています。

日本の人口のおよそ15%の人たちが、聞こえに何らかの問題を抱えているということになります。
しかし、その約半数の47%は自分の聴力の低下を自覚していないそうです。

こうしたデータを見てみると、難聴はわたしたちにとって見過ごすことのできない大きな問題だということができます。

年齢と聴力の関係

聴力の低下は年齢を重ねることによって誰にでも起こる現象といわれています。

加齢によって聴力が低下しはじめる時期は人によって異なり、程度もさまざまですが、一般的には高い音から聞こえにくくなるのが特徴です。

高い音が聞こえにくい

私たちが音を聞く上で特に大きな役割を果たすのが、内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」という器官の中にある有毛細胞です。

有毛細胞は入ってきた音の高低や強弱を分析し、電気信号に変えて聴神経を通じて脳に伝えます。有毛細胞は長時間使い続けるうちにダメージを受けてしまい、一度、ダメージを受けてしまった有毛細胞の再生は非常に難しいといわれています。
蝸牛の入口近くにある有毛細胞は高い音の分析を行い、奥の有毛細胞は低い音の分析を行っています。
入口に近い有毛細胞は、絶えずいろいろな音にさらされていることになるので、特にダメージを受けやすくなります。

加齢による聴力の低下が高い音から聞こえにくくなっていくのは、このことが原因だと考えられています。

聞き間違いや、言っていることが聞き取れない

聴力の低下は、音の大きさだけの問題ではありません。

聴力が低下してくると、音がしっかり聞こえないというだけでなく、聞き間違いが増えたり、声は聞こえても言っていることが聞き取れないということが増えたりしてきます。

加齢による聴力の低下は高音が聞こえにくくなる傾向があるため、周波数の低い母音は聞き取れているのに周波数の高い子音が聞き取れていないという現象が起こり、言葉の聞き間違いなどが起こってくるのです。

難聴の種類


伝音難聴


中耳炎や鼓膜の損傷など、外耳から中耳にかけての障害が原因で起こる難聴です。医学的な治療が可能だといわれています。

 
感音難聴

内耳より内側の感音器の障害によって起こる難聴です。加齢によって聞こえにくくなるのは感音難聴です。一般的に医学的な治療による改善は難しいといわれています。


混合性難聴


伝音難聴と感音難聴の両方の症状がみられる難聴です。

難聴は本人だけでなく、社会全体に影響を与える問題

聴力の低下は、視力の低下と比べてはっきりと症状を自覚しにくいという特徴があります。
聴力の低下はゆっくりと進行していくことが多いのに加え、日常生活でさほど不便を感じていなかったり、外見からはわかりにくいために周囲から指摘されることが少なかったりするために、自分の聴力が低下してきていることをなかなか自覚できないのです。

しかし、難聴をそのままにしておくと、聞き間違いなどで相手の話を誤解してしまったり、周囲の人たちと話をすることが億劫になってきて、引きこもりがちになったり、社会から孤立するようになってしまう恐れもあります。

そういう意味では、難聴は本人だけではなく、家族や職場なども含めた社会全体に影響を与える問題だということが言えます。