私たちが音を聞くことができるのは、内耳にある小さな 有毛細胞 の働きによるものです。 音波が空気中を伝わって耳に入り、この有毛細胞に届くと、脳が「音」として認識できる信号に変換されます。
しかし、この大切な有毛細胞が傷ついてしまうと、聴力の低下につながります。実際に、大きな音がその主な原因のひとつです。
長時間にわたり大きな音にさらされると、細胞が過剰に刺激され、やがて損傷してしまい、騒音性難聴 を引き起こします。これは特に高い音を感じる部分で起こりやすく、会話の一部が聞き取りにくくなることがあります。
もし「騒音による難聴かもしれない」と感じたら、まずは耳鼻咽喉科へ。
騒音性難聴の原因は、その名の通り「大きな音」にあります。 私たちの暮らす世界には、日常の中にも耳に負担をかける音があふれています。
チェーンソーや電動工具のような大きな音はもちろんですが、実はヘアドライヤーやスムージーメーカーなどの身近な家電も、長時間浴び続けると内耳の小さな有毛細胞を傷つけてしまうことがあります。
一見心地よく感じる音であっても、長時間続くと耳にダメージを与えることがあるのです。
騒音性難聴は、非常に大きな爆発音など一度の強い音によるもの と、長時間の騒音への繰り返し暴露によるもの の両方で起こります。 そのリスクは「音の大きさ(デシベル)」「暴露時間」「音源との距離」によって変わります。
テレビの音量をつい大きくしてしまったり、周りの人に「もっと大きな声で話してほしい」とお願いしたり、同じことを繰り返して聞き直すことがあるかもしれません。
混雑した場所では相手の声が聞き取りにくくなったり、電話では会話の内容がわかりにくく感じることがあります。
騒音性難聴は、主に高い音(高周波数)に影響を与えるのが特徴です。 たとえば、鳥のさえずりやドアベル・電話のベル、女性や子どもの声などが聞き取りにくくなります。
聴力検査では、約 4,000Hz 付近に「くぼみ(ノッチ)」が現れる のが典型的なパターンです。難聴が進行すると、このくぼみがより低い周波数にも広がり、深くなることがあります。
また、加齢による聴力の変化が重なると、影響を受ける周波数が増えていくため、時間とともにこの特徴的なくぼみが目立たなくなる場合もあります。 騒音性難聴は左右対称に起こることが多く、両耳に影響します。
聴力検査は、難聴の種類や進行の程度を正しく把握し、最適な治療法や補聴器の選択につなげるためにとても重要です。
下の図は、治療せずに放置した場合に進行する騒音性難聴の例 を示しています。
電動工具を使う作業やコンサートなど、大きな音にさらされると分かっているときは、耳を守るために耳栓やイヤーマフなどの聴覚保護具を着用しましょう。